広島地域 8ch

毎週土曜日 朝11時35分放送

独自の価値を創造する企業をテレビ新広島とTSSプロダクションが総力取材

放送内容 過去に放送した番組をご覧ください。

2025.09.06 O.A.

低温輸送のネットワークが変える食生活

株式会社ムロオ
原点は生ガキの配送

青いトラックの荷台に描かれた、ちょこんと立つペンギンのキャラクターを見たことがあるだろうか。幹線道路やスーパーマーケットの駐車場、あなたの町のどこかで、そう、きっと目にしたことがあるはず。毎日、食卓に並ぶ新鮮な食材。そうした“当たり前”を守るためにペンギンのトラックは日夜走っている。
呉市倉橋町室尾(むろお)から始まった、株式会社ムロオ。創業者の古里の名を冠したこの会社が50年もの間、日本の食を静かに、そして力強く支えてきた。
創業は1975年。倉橋町の海で獲れた生ガキを冷蔵トラックで大阪へ、その日のうちに鮮度そのままに届ける。誰もが無理だと言った挑戦だった。しかし、ムロオはやり遂げた。低温で運ぶ商品がまだ少なかった当時、地元で売るよりも5倍、10倍の値段がついた。運ぶことで周りの客が潤っていった。"食"に命を吹き込む物流の挑戦が、ここから始まった。

鮮度を保つ徹底した温度管理

あれから50年。ムロオは、全国に食品を低温で届ける物流のネットワークを構築し、業界大手へと成長を遂げた。
多温度に対応した広島市佐伯区の物流拠点では、県内をはじめ、全国へ運ばれる要冷蔵の食材を8℃で管理。メーカーなどの生産者から消費者に届くまで、徹底した温度管理が行われている。例えばトラックから荷物を積み降ろす際も、倉庫と密着させて外気の流入と冷気の流出を防いでいる。建物の冷気自体が商品なのだ。
さらに特徴的なのが、メーカーにスペースの貸し出しを行っていること。弁当製造業者の場合、集荷後にムロオの従業員が仕分けし、配送を行う。また、商品のチェックや野菜のカットなどの加工も担っている。メーカーの倉庫としての機能も併せ持ち、在庫管理など業務の一部を請け負っているのだ。
食品の長期保管に欠かせない冷凍庫は氷点下25℃。可動式ラックを採用することで無駄なスペースをなくし、収容能力を高めている。カテゴリーやメーカーごとに保管でき、出庫の効率化を図っているのだ。
また、最新のシステムを備えた茨城県の物流拠点では、ロボットが自動で荷物を運ぶ。省力化や省人化を進めて生産性を向上。物流の最先端の設備を備えている。
ムロオは全国におよそ10万トンの保管能力を持つ低温管理倉庫を展開。冷凍冷蔵倉庫の設備能力成長率は国内トップを誇る。
そうした食品を全国に届けるのが「ブルーライン便」と呼ばれるトラック。
その扉の中にも、フレッシュな食材を運ぶための秘密がある。荷台は冷凍機を2台搭載し、仕切り板で自在に2つの空間をつくることができる。冷凍、冷蔵、常温の3つの温度帯を組み合わせて、様々な食品を運んでいる。
こうした冷凍車をおよそ1500台保有し、食品物流の専門家として、ムロオは"鮮度"という価値を守り続けているのである。

運転手不足の解消に手厚い免許取得制度

一方、労働時間の規制が強まり、「物流の2024年問題」として、トラック運転手の不足が叫ばれる中、ムロオには社内で中型と大型免許を取得できる制度があり、こうした社会問題の解消に取り組んでいる。費用を会社が全額負担するこの制度を使い、ドライバーとして活躍している女性たちも多い。取得率100%の育児休暇も、そんな働く女性を支えている。
2024年問題は、ドライバーの安全運行が注目される契機にもなり、それが新たな挑戦にもつながっている。

“流通を物流が変えていく”

冷蔵・冷凍商品の需要が高まる中、山下俊一郎代表取締役社長は「日本の流通を物流の力で変える」と意気込む。生産者、小売店、消費者など流通に関わる人たちが幸せになる仕組みを物流でつくっていくことに挑戦している。
ペンギンマークのトラックには、鮮度を守る冷気と、届ける人の想いが詰まっている。あなたが今日食べた、その一品。もしかしたら、それはムロオが届けたものかもしれない。

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今回のポイントは「時間と空間から生まれる価値」

―物を運ぶだけじゃない様々な取り組みをされてますね―
 モデル拠点となる広島支店の物流センターを山下社長の案内で見学してきた。倉庫の中で仕分けを着々と行っている姿を想像していたが、実際にはメーカーの工場の一部がそこにある。物を運ぶだけじゃないまさに物流センターがあった。

―加工、商品包装、在庫と出荷管理と食品メーカーかと思いますよね―
 物流は商品を運搬するだけでなく、消費者・小売業者のために、まずは「時間」を制御することで物流の価値を生んでいる。お取引先の工場から発送した冷凍冷蔵状態の商品をそのまま在庫保管。その在庫から必要な時にその場で出庫し、包装する工程で最終加工し、商品として完成させて消費期限開始日を指定し、すぐ出荷。
 時間を止める、期限を延ばす、加工段取り工程を短縮させている。時間を調整することで時間を調整する価値を生む。

―時間から生まれる価値と、空間から生まれる価値もあるんですね―
 工場は原料を入荷し加工して包装し出荷する。お取引先である原料生産者・卸事業者・小売事業者と日々調整し、季節的な需要変動を踏まえながら在庫調整を図っていく。これが工場へムリムラを生じさせムダも発生する大きな要因となっている。
 加工工程は工場の必須空間であるが、保管する場所は原料や商品を置くだけになる。工場は作るところに集中できれば、計画的に生産をすることで生産性が高まり価値も高まる。この保管する空間を制御するのが倉庫であり、食品では冷凍冷蔵もできる入荷・中間在庫・製品を保管できる倉庫が重要となる。この空間を有効かつ必要なだけ提供し、思うがままに入出庫できるシステムがあれば空間の価値が生まれる。

―「時間と空間から生まれる価値」はまさに物流の根幹なのですね―
 お取引先の都合を調整してムリムラムダを抑え、いかに効率よく、時期・時間に合わせた商品を消費者へ届けられるか、スムーズな物流を達成することは、環境への配慮も相まって重要な事業と言える。そしてまだまだ奥が深いし、やることもやれることも多い。
 物流を極め、時間と空間を最適に機能させることが、すべての企業の安定経営と業績向上へつながるともいえる。
 ペンギンがかわいいムロオの総合物流サービスが、物流の可能性を広げ、さらに海外へ無限に発展していくことを期待したい。
企業情報
会社名

株式会社ムロオ

業種運輸業,郵便業
事業内容1. 自動車運送事業 冷凍・冷蔵輸送、チルド食品積合わせ運送 納品代行
2. 特別積合せ運送事業
3. 第 1 種利用運送事業
4. 貨物軽自動車運送事業
5. 倉庫業 冷凍・冷蔵・常温倉庫、商品流通加工
6. 食品の仕分け納品代行業
代表者代表取締役社長 山下 俊一郎
従業員数6863人(2025年8月現在)
年商762億円(2024年度)
所在地〒737-0051 広島県呉市中央1丁目6番9号
お問い合わせTEL:0823-24-2727
FAX:0823-21-3600
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