広島地域 8ch

毎週土曜日 朝11時35分放送(土曜日 深夜再放送中)

独自の価値を創造する企業をテレビ新広島とTSSプロダクションが総力取材

放送内容 過去に放送した番組をご覧ください。

2023.03.18 O.A.

1/100ミリの職人技は海から空へ

株式会社きしろ
大和ミュージアムに現れた大型旋盤

戦艦大和にまつわる歴史を知ることができる大和ミュージアム。
その敷地内で歴史的なイベントが開かれました。主役は、この大きな丸い円盤が特徴の機械。鉄を削るために使われる旋盤と呼ばれるもの。
それがなぜ注目を集めているかというと…これを使って削り出したものが、あの戦艦大和の当時、世界最大級と言われた主砲だったからなんです。実はこの旋盤。戦艦大和が建造された1940年ころにドイツから呉に輸入された海外製の機械。2台輸入され、うち1台は戦後、GHQによって破壊。もう1台は、ある場所で保管されていました。その場所と深い関係にあるのがセレモニーに登壇し、祝辞を述べたこちらの男性。株式会社きしろの松本社長です。

100年以上も変わっていない…でも今を支える…

ミュージアムの大改装を前に展示物の充実の一つとして、きしろが寄贈。
実はこの大型旋盤、きしろで1990年から2013年まで活躍していたといいます。いったいどんな企業なのか。やってきたのは呉から直線距離でおよそ200キロのところにある兵庫県播磨町。工場内に並ぶ大型の機械。寄贈された旋盤と同じ形です。旋盤自体の基本的な構造は100年以上も変わっていないのです。ここでは、船舶のプロペラを回す軸など、大型の金属部品を作っています。取引先から支給された大きな金属の塊を旋盤に装着し、設計図通りのサイズに削り出します。

1/100ミリを保つ加工

難しいのは、削るときに発生する熱!実に数百度にもなるのです。そして熱を持つことで削られていく製品にズレが生じます。そこできしろの職人たちは、熱で寸法が変わる事を予測して、削り出していくのです。きしろが作った軸は他社が作ったプロペラと接合し船に取り付けられます。その際、接合がピッタリあっていないと動力がしっかり伝わらなかったり破損の原因にもなるのです。きしろはその精度の高さを実現したことで船舶用の軸製造において世界トップクラスを誇っているのです。日本の技術の粋をあつめて作られた戦艦大和の技術がいまも脈々とつながっている、ということなのです。

舞台は海から空へ!

創業以来、1世紀。いまでは、長年培ってきた船舶部品の切削技術を応用し、新たに航空機部品製造にも乗り出しました。求められるのは、船舶よりも厳しく高い精度。そのため、最新の工作機や三次元測定器を導入し、ハイレベルの完成度を追求しています。もはや世界の海と空の航路は、精度の高い技術力を持つ、きしろの職人たちによって守られているといっても過言ではないのです。


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松本社長にインタビューしたところ、この旋盤は国からの払下げ後、別の会社で大きな部品の加工に使われ、その後きしろが譲り受けて使用していたそうだ。必要に応じて元の工作機械仕様を改修して、活躍できるように使いこなしてきたとのこと。最新の機械も古い機械も役割を果たすことで生かされる。一方、製造業はその時代や市場の動向に柔軟に大胆に対応していくことが重要される。
きしろも時代の荒波を越えるために進化してきたそうだ。創業は船舶エンジン製造から始まり、戦後になって金属部品の粗加工をする受注から始まる。粗加工から仕上げ加工まで一貫してできるように進化し、技術力と加工技能を高め付加価値の高い部品を供給した。今も船舶部品は柱であるが、船舶需要が減少したときに取り組んだのが陸上にある新しい
発電設備の部品とのこと。強度と耐熱性の高い加工が困難な難削材の加工技術が必要となり、技術開発が始まった。陸に上がった難削材の加工技術は飛行機にも多く使われている。そこで参入したのが飛行機部品で、とうとう空に舞いあがる進化を遂げたとのこと。海からいきなり空には進化できない。コツコツと技術と技能を積み上げることで会社は進化
する。新しいことはやってみる。次に挑戦していくことで成長していくことを大切にしている。
量産に移行した部品であっても進化は進めなくてはすぐ追い抜かれる。ここで大切なのは難削材や大型部品は一度加工が始まると終わるまで数日かかることもある。それを量産するので加工時間目標は確実に守るし、以下に短縮していくかは直接利益につながっている。短縮するには、加工技術開発、加工プログラム、機械装置周辺の改善、設計、準備、労力、環境、エンジニアと職人がすべて納得できる方法でなくては実現できない。ここを高めていくことで自社の能力を絶えず高めていく。新しい製品はワクワクが止まらないそうだ。部品は加工が難しくなるほど、より環境の良い工場で作ることが望まれる。きれいな工場で働きやすさも兼ねなくては高精度な製品はできない。大きくすごい部品作りはこれからもかっこいい仕事になる。
大きな機械で大きなものつくり動かす。舞いあがるきしろに期待したい。
企業情報
会社名

株式会社きしろ

業種製造業
事業内容重機械利用の大型切削加工業大型溶接構造物の製作及び組立業各種産業プラント用装置、機器類の製造業太陽光発電事業
代表者代表取締役社長 松本 好隆
従業員数約300名
所在地本社: 〒673-0881 兵庫県明石市天文町2-3-20
お問い合わせTEL:078-917-1223(代表) FAX:078-917-1226
ホームページhttp://www.kishiro-g.co.jp/